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昨年6月,KPMF(黒沢ピアノ音楽基金)*2) 主催の「第1回 ピアノ・アンサンブル音楽による日米文化交流」*3) がカルフォルニアで行われたが,それに「連弾ネット」も参加し,瀬尾&加藤デュオ*4) によってそのクラークの連弾作品,「南アメリカ舞曲集 South American Dances」が演奏された。 その縁もあって後日,作曲者自身から「連弾ネット」にかなりの数の連弾作品と独奏曲の楽譜が送られてきた。決して「義理」があるからという理由ではなく,作品が素晴らしいので早くご紹介したかったのだが,今回になってしまった。
ガンボは日本ではオクラとしてお馴染みの野菜で,オクラが入ったガンボスープはニューオリンズ名物。この野菜の形が面白いのか,それとも現地にこの名の音楽のジャンルがあるのかは不明。快活で輝かしい作品で,その明るさとたくましさはかすかに師のミヨーの「屋根の上の牡牛」を思わせる。「川のセレナード」はブルース色の強い作品で,悠々とした即興演奏の雰囲気。クラークの作品は,この曲に限らず,なによりもピアノの響きがとても美しく多彩である。「マルディグラの朝」は上行する音階が反復され,カーニバル最終日の熱狂への期待に溢れたワクワク感を出している。各楽章の演奏時間はそれぞれ約1分50秒,2分半,2分で,無論1曲だけの演奏も可能。
この作品は学生用の作品シリーズ(Student Piano Library )の中級(lntermediate)と銘打たれてはいるものの,単に学習者向けのレッスン用の作品と見てしまうにはあまりにも惜しい優れた内容である。両端の楽章は,3+3+2 や 3+2+3 といった典型的なラテン・リズムの伴奏に乗って,軽快に軽妙なメロディが歌われる作品。 こうした作品では,特に初心者向けの作品では,単にリズムの面白さに頼り過ぎて,和声やメロディが単調なケースが多いが,この作品は違っている。まずメロディそのものが魅力的であり,和声の展開も転調も変化に富んで面白い。各楽章の演奏時間はそれぞれ約1分50秒,3分,2分。ラテンの「ノリ」が得意なデュオにとって,学習用,発表会用だけでなく,リサイタルのアンコールにも使える効果的な作品である。
「フロリダ幻想組曲」の2曲目と基本的には同一曲だが,調性を変えた上に小節数も異なり,連弾曲から独奏曲への安直な改変ではなく,独奏曲に適するように丁寧に手が加えられている。こちらは中級の独奏曲だが,作品の傾向は同じで,ラテンの作品が弾きたいという学習者に向いている。
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