2月の末に、連弾ネットの豊岡氏より米国シリコンバレー地区での KPMF のイベントについて打診があった。 門外漢である尺八奏者が参加すること、および豊岡氏の参加も現状では未定であるとのことから、その時は参加に関しては やや半信半疑だった。4月に入り、具体的化するとともに大急ぎで準備にとりかかった。
KPMF の計画は、 3rd International Piano Music Festival Educational Sessions and Concerts というイベント本体と、 それに先だっての US-Japan Cultural Exchange through Piano Ensemble Music というイベントを実施する一週間に渡る意欲的なものだ。
US-Japan Cultural Exchange は6月21日、22日の2日間に渡る、ピアノを中心とした日米文化交流を図るコンサートということで、 初日は日米の作曲家による歌や日米の作曲家によるピアノデュオ作品の紹介、翌日は日本の伝統楽器を 中心としたアンサンブルの紹介とラグタイムというコントラストの高い企画であった。
私は、この日本伝統楽器のセッションの40分を担当することになり、米国の皆様にどのように伝統的な音楽の アンサンブルを楽しく伝えるかを検討することになった。ピアノのイベントでもあり、伝統楽器とピアノのアンサンブルを軸にしながら米国の皆様にはなじみの薄い和楽器の紹介や、楽譜の紹介を組み立てた。
日本の伝統音楽のアンサンブル紹介の為に、現地で琴や三味線の演奏活動をされている、Shirley Muramoto 氏、Brian Wang氏の協力をお願いし、日本の伝統的な三曲合奏や宮城道雄の 「春の海」などの定番曲採り入れた。 また、現地で活躍されているソプラノの平野孝栄氏との共演も組み入れた。 琴・尺八・三味線・ピアノ・ソプラノという組会わせのセッションは日本でも稀なプログラムとあいなった。
セッションの最後に全員で、お江戸日本橋を演奏したが、特殊な組み合わせにピアニストと尺八奏者がチャンチキや ウッドブロックなどの鳴り物を活用して動き回るパフォーマンスを追加し、ビジュアルにもおもしろいセッションになった。
3rd International Piano Music Festival は23日から、26日までの間 教育セッションとコンサートが開催された。
25日はガラコンサートで、ピアノデュオ以外にピアノとバイオリンなどの楽器のアンサンブルの演奏が披露された(クリックで拡大)。
尺八の参加する曲として、新鋭の Marty Regan 氏のピアノトリオと尺八のための
「In Remembrance」と
尺八とピアノの為の「Tears from Heaven」(作曲:Michael Reimann)を演奏した。
In Remembrance は、パガニーニの専門家であるバイオリニストJoseph Gold 氏、
韓国出身で新鋭のチェリストの Augast Lee 氏および豊岡氏の国際色豊かな組み合わせになった(クリックで拡大)。
この曲は September 11を題材に西洋・東洋の手向けを音楽で融合させた曲で、 彼の西洋音楽・東洋音楽の理解の深さを生んだ名曲だ。 バイオリン、チェロ、尺八の大変美しい3声の和音が、西洋−東洋融合を提供できたのではないかと思っている。
じつは選曲にあたって気になったことがある。ピアノと尺八を含む曲というのは大変少ないし、 日本でも演奏される機会は大変少ない。また、尺八という楽器は、陰旋法を中心に演奏されるため、 海外の方からみるとかなり暗い短調の曲ばかりとなる。 今回のコンサートにあたっていくつかの曲を提示したが、KPMF も選曲が難しかったのではないかと思う。 ピアノと尺八という組み合わせによる音楽活動や国際的な場での演奏を考えると、音楽コンテンツの多様性も重要になってくるだろう。
本フェスティバルにあたって、KPMFより Hosted Family による宿泊先を提供していただいた。
シリコンバレーというカルフォルニアでも豊かな地域で、特に滞在先のサラトガ市は、
バレー(谷)の山側にあたる緑の美しい地域である。
写真は、Irene Breckさん邸(クリックで拡大)。 Irene さんのおいしい手料理やカルフォルニアの太陽をあびた特大フルーツ、そして、音楽談義をアットホームな環境のなかで楽しむことができた。地元のボランティアの皆様とのふれあいも、大変思い出深いものとなった。
最後になりましたが、今回のイベント出演にあたりご支援をしていただいた連弾ネットの幹部の皆様、KPMF および Host Family の皆様に感謝の意を表します。
尺八演奏家 立花 茂生
立花 茂生(呂萌山)プロフィール