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デュラン社の “ Œuvres pour piano à 4 mains vo1.2” *1)の中身の続き。
そして演奏時間11分という大作が1884年の夏に書かれた「ディヴェルティスマン(嬉遊曲)」。初期の作品とはいえ,その洗練された抒情,変化に富む曲想と極めて多彩な響きは,連弾作品としても実に効果的で,知られていないのが本当に惜しい。拍子も6/8 2/4から3/4,2/4,6/8と変化し,主要なテンポの変化だけでもAllegro Scherzand, Andante, Andantino, Allegretto vivo, Andante,Allegretto vivo と変わり,コーダは更にPiù mosso となり,熱狂的なクライマックスを迎える。この年の5月〜6月はローマ賞の試験の時期で,そのための作品,合唱とオーケストラのための「春」や,大賞を受賞する「放蕩息子」を作曲しており,創作意欲の充実ぶりをうかがわせる。
まず「祭り」は演奏時間6分半ほど。平行和音が多用され,しかも厚い和音はまさにオーケストラの響きである。執拗に反復される冒頭の短いモティーフと,中間部の滑らかなメロディが印象的。 「バレエ」はSによって弾き出される主題の主要部が日本の陰音階と同じため,とても日本的に響き,一瞬「ハッ!」としてしまう。もちろん日本的に響くのはその箇所だけなのだが。それにしても伴奏の和音のアルペッジョやメロディの装飾音が,この楽章の色彩感を実に豊かにしている。演奏時間は4分ほどで,滑稽なようでもあり,また同時に荘重で儀礼的にも聞こえる主要部と,甘美(甘美過ぎるほど!)な中間部との対照が際立つ。「夢」はタイトルから想像通りの曲想だが,ここでのトレモロやアルペッジョなどの巧妙な工夫は,改めてドビュッシーが若くしてピアノから色彩を引き出す天才であったことを思い知らされる。演奏時間約6分。「行列とバッカナール」はファンファーレで始まる快活な曲で演奏時間は8分ほどとかなり長い。タイトル自体,前述の2巻中の「バッカスの勝利」の第4楽章「行進曲とバッカナール」に似ているが,どちらも主調はホ長調で,モティーフやリズムには似た形も見られる。 ともかく,こうした新しいレパートリーを世に出す出版社の音楽界への貢献を称えたい。あとはこれらの楽譜に新鮮な命を吹き込む演奏家の出現に期待したい。
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