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「レボリューション(革命,大変革)」*1)シリーズのCDをご存じだろうか? チェンバロを採り上げた「チェンバロ・レボリューション」*2)では,ラヴェルやディーリアス,そしてブゾー二やR.シュトラウスらの作曲家が,チェンバロ作品を残していたことを教えられたし,アルバムの最後に,多分世界で最も有名なチェンバロ作品の「バロック・ホーダウン」(ご存じ,ディズニーランドのエレクトリカル・パレードに登場する)が収録されているのも楽しい。 まったく,このシリーズのCDは「この楽器のためにこんな意外な作曲家が!」という驚きを与えるだけでなく,その楽器の専門家や熱心なファン以外には比較的地味な楽器に対する認識が一新させられる。
だが更に興味深く貴重な作品が収録されている。 クライスラーによるヴァイオリン編曲の「踊る人形」以外の作品はほとんど知られていないポルディーニの軽妙なメロディが聞ける「人形のワルツ」,中国民謡の「茉莉花(モーリーホワ)」が,なぜか横浜の水夫の歌となっている不思議なジャポニスム作品の「ヨンキナ」,プロコフィエフの初期ピアノ作品を予感させる「若人の夢」,そして「セヴラックは良い香りのする音楽を作る」と讃えたのはドビュッシーだが,その言葉がまさに真実であることを痛感する「ぶどう棚の踊り」,そして「パシフィック231」の迫力とピアニスティックな演奏効果には,鉄道ファンでなくとも快哉を叫ぶに違いない。 多分,我が国最初の連弾作品であろう「連弾小曲」と,現代の日本の代表的連弾作品の「Tong Poo(東風)」を聴き比べれば,およそ100年間の我が国の洋楽の受容と創造の歴史に思いを巡らさずにはいられない。 特に「若人の夢」「ぶどう棚の踊り」「パシフィック231」は,これから確実に演奏される機会が増えるであろう。 そうした新しく,そして素晴らしい連弾のレパートリーを提供した点に限ってもこのアルバムの意義は極めて深い。難曲も多い上に,参考にできる録音も少ないこれらの作品の演奏は,「Jumelles(ジュメル)」こと宮原ちひろ,みちるの双子の姉妹*6)が担当し,見事にその任を果たした。 この二人の演奏は2005年12月に茨城県日立市で毎年行われている「Viva!! ピアノデュオコンサート」*7)でラフマニノフを聴き,双子ならではの等質の響きによる,歌に満ちてしかも息の良く合った演奏がとても印象深かった記憶がある。 私はこのアルバムの制作にも少しかかわる機会を得たが,今までの認識不足を改める必要に迫られた。それは,双子の優れたデュオは世に多いが,何か神秘的な能力によって,双子は自然に息の合った演奏ができるものと思い込んでいた。 しかしこのアルバムでの二人の地道な努力に間近に接し,このような魅力的な連弾演奏のためには,双子といえども練習の積み重ねが大切なことを再認識した次第である。
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