13.「アンソロジー楽譜の楽しみ」 その4
〜女性作曲家による連弾曲集〜
 来る8月6日(月)〜10日(金)まで,
杉並公会堂小ホール
「女性作曲家音楽祭2007」*1)
が予定されている。

8日,9日には「ピアノ曲マラソン・コンサート」として,
両日とも午前,午後,そして夜の3公演のコンサートが行われ,
パンフレットを見ると,数多くのピアノ独奏曲に混じって,
シャミナード(8日はちょうど生誕150年目の誕生日に当たる)の連弾曲と,
ポーランドのマリア・シマノフスカの「3手のためのワルツ集」
といった作品も含まれている。

これを見て,もう2年近く前になるが,
2005年9月30日国立音楽大学講堂小ホールで行われた
「ピアニスト=コンポーザーとしての女性たち〜そのデュオ作品をめぐって〜」*2)
と題された,国籍も時代もさまざまな女性作曲家たちによる
ピアノ・デュオ作品の演奏会を思い出した。

このコンサートでは
第一部がマリー・ジャエルエイミー・ビーチ
マーガレット・ガーウッドの連弾作品が,
第二部はシャミナードタイユフェール
ジョーン・トリンブルの2台ピアノ作品が演奏された。

その第一部の「ネタ本」となった楽譜が,
ヒルデガルト(Hildegard)社刊のアンソロジー*3)
である。

タイトルは
“Music for Piano Four−hands by 〜”*3) 
となっており,
上記の3人の他に,18世紀中頃に生まれたとされる
イギリスのジェーン・サヴェジ,フェーリクスの姉の
メンデルスゾーン=ヘンゼルの名が記され,
計5人の女性作曲家の連弾作品が収録されている。

史上初の女性作曲家とも言われ,
神秘的な預言者にして聖職者でもあった
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098〜1179)の名を冠したこの出版社は
アメリカのペンシルバニア州にあって,
女性作曲家による作品を出版している。
シマノフスカの「3手のためのワルツ集」もここから出版されており,
そのサロン風の澄んだ響きを味わうこともできる。

確かにシャミナードシマノフスカの作品には
「繊細で優美」なものもあるものの,
今日,「女性作曲家の作品=繊細で優美」といった
固定観念に囚われている人はいないだろう。

このアンソロジーに収録されているジャエル(1846〜1925)
「5つのワルツ」(全13曲の作品8から5曲を収録)の中には,
驚くほど濃厚なロマンと強力な推進力に満ちた作品もあり,
作品の雰囲気だけから作曲家の性別を当てることなど,
私には到底無理である。

それはそうと,このアンソロジーには
ビーチ(1867〜1944)「夏の夢」(Summer Dreams)も収録されている。
全6曲ともそれほど難しくない上,典型的なロマン派の小品群はとても親しみやすく,
季節に合わせて弾いてみるのも一興であろう。

もっともこの作品だけが目当てなら,
Kjos(ジョス)社刊*4)の楽譜にはスコア形式という利点がある。

実は,この欄の筆者の原稿,文章にはなんの強調も飾りもなく,
初回から文章レイアウトや本文中のリンク等は,
すべて豊岡氏のお世話になっている。

以前,この欄でMcGraw(マグロー)氏の手によるアンソロジー
“Four Centuries of Piano Duet Music”
(Boston Music Company 社刊)
が,カタログから消えてしまったと書いた*5)
が,
リンクをたどると “seetmusicplus.com*6)
全4巻とも在庫があることが分かった。
すぐに「ダメもと」で持っていない第1巻を注文したら,
なんと7月中旬に「発送した」というメールが届いた。

今まで,「連弾用」を注文したのに送られて釆たのが「ソロ用」だったり,
2台ピアノ作品でI・IIが分冊の楽譜が片方しかなかったりといった,
実に「苦い」経験がたくさんあるため,
現物を確かめるまでは喜べないが,
無事に入手できたら,どんな作品が収録されているのか,
ここにご紹介したい。

それにしても,
筆者が誤ってボストン・ミュージック社のサイトと思い込んでいたのは,
いったいどこだったのであろうか?



【2007年7月22日入稿】

【参考情報】
*1) 「女性作曲家音楽祭2007」の詳細については こちら。
*2) 「ピアニスト=コンポーザーとしての女性たち〜そのデュオ作品をめぐって〜」の詳細については こちら。
*3) Hildegard: “Music for Piano four hands”1994, Catalog Number: 09404 (Presser #490-01135) 試聴可能
*4) NEIL A KJOS MUSIC COMPANY: Arm BEACH/Summer Dreams WP364
*5) 「11. アンソロジー楽譜の楽しみ その2」参照
*6) sheetmusicplus.com

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