「ヨーク・ボーエンの連弾曲の魅力」

新春おめでとうございます。

ロンドンあれこれ、3回目は、作曲家、ピアニストのヨーク・ボーエン(1884-1959)

私と同じ2月生まれ、そして何よりも私の母校、英国王立音楽院にて学び、
(ここまでは、私との共通点です。笑)25歳の若さで教授になってしまったという
天才肌のヨーク・ボーエン。

ボーエンを個人的に知っていた方の話しによると、“ヨーキー”と皆に呼ばれていたそうです。
連弾ネットのご協力を得て、この春4月に行うワークショップでは、
そんなボーエンを中心にイギリスの連弾作品を皆さんに知ってもらう機会となればと思っています。

もちろん、自由曲持込も大歓迎です。

サン・サーンスは、若いボーエンをイギリスの最も才能ある作曲家」と称賛したといいます。
”イギリスのラフマニフ”とも言われるボーエン。

魅力的な器楽作品を数多く残していますが、その中でも、ピアノデュオ作品は、
作曲家自身、同じく王立音楽院の教授であったハリー・アイザックとのピアノデュオ
演奏活動を盛んに行ったことからも分かるように
欠かせないレパートリーだったことがわかります。

今回は、ワークショップで取り上げる連弾曲の魅力を簡単にご紹介したくおもいます。

ワークショップにご協力頂く松永教授の「イギリスのピアノデュオ作品」とともに
参考として下されば嬉しくおもいます。

「組曲 第1番 作品52」

I. プレリュード
II. ダンス
III. ノクターン
※2曲目、3曲目の演奏順序は演奏者の自由

ボーエンの連弾作品中、最も内容の濃い作品とも言っても過言ではないと思います。
ドラマティック、そして衝撃的なテーマで始まる「プレリュード」は、オーケストラ的なとてもリッチな和声が特徴です。
情熱的なセコンドとプリモの掛け合いによる高揚のあと、天へと導かれるようにして静かに終結。

「ダンス」そして「ノクターン」は、どちらを先に弾いても良いですよ、という作曲家自身のコメントが
楽譜に記してありますが、叙情的な序奏のあと、静かなカンタビーレがプリモによって歌われる「ノクターン」の後、
ジーグのリズムによるアイルランドの民謡的な「ダンス」で楽しく終わると華やかな作品としての演奏効果が狙えます。

「ダンス」そして「ノクターン」とちょっと大人のムードで静かに終わるのもまた違った角度から
この作品が味わえるとおもいます。
演奏会のプログラムに合わせて順番を決めるのもいいでしょう。

「組曲 第2番 作品71」

I. アレグロ
II. 舟歌(バルカローレ)

III. モート ペルペテュオ(無窮動)

組曲1番に比べ、規模的には小さくなるもの、軽快なユーモアさたっぷりのこの組曲。
Allegro con spiritoとあるように元気一杯、エネルギッシュな「アレグロ」に続き、心地よい舟歌のリズムに乗って、
優雅にプリモが歌い出す「バルカローレ」は、即興的なプリモのパッセージが演奏者のセンスの見せ所です。

惜しむようにして静かに終わりを迎えた後、雰囲気ががらりと変わり「モート ペルペテュオ」です。
無窮動または常動曲という意味ですが、プリモ、セコンド、それぞれにくるくる回りめく16部音符が、
クロマティックのちょっとコケティッシュでリズミカルなメロディーを乗せて展開していくとても演奏効果が大きい作品です。

「四つの作品 作品90」

I. プレリュード(前奏曲)
II. ユーモレスク
III. セレナーデ
IV. ダンス チューン(舞踏曲)

「プレリュード」は、ボーエンの音楽の特徴の一つでもある彼の息の長いメロディーがエスプリの効いた
ハーモニーの上に展開されていく素敵な作品

「ユーモレスク」はその名の通り、クロマティックを駆使したリズム、ハーモニーともに
ちょっとプーランク的な軽快なスケルッツォです。

洗練かつ優美な「セレナード」はプリモ、セコンドの愛情たっぷりの美しい掛け合いが
ボーエンの連弾曲の魅力の一つと言えます。

可愛らしく終わる「セレナード」に続きエネルギッシュに始まる「ダンス チューン」は、
組曲一番の「ダンス」と同じくジーク・スタイルです。
とてもリズミカルなこの作品は聴いている人をあっという間に巻き込んでしまう愉快な作品です。(和香)

【2008.2.1入稿】