| 「"Quintillion"との共演」 |
ロンドン便り、2回目。
今日は、シェークスピアの故郷、ストラットフォード・アポン・エーボンをご紹介します。
BBCウェールズ交響楽団のメンバーからなる木管五重奏団、Quintillionとの共演があり
先週訪れたのですが、13年前に父と訪れて以来でした。
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| 木管五重奏団Quintillionと 演奏会終了後。 (クリックで実物大) |
演奏会は、「シェークスピア インスティチュート」。
バーミンガム大学の建物です。
ストラットフォード室内楽ソサエティーという地元の音楽愛好家が
35年以上も続けているコンサートシリーズの一夜でした。
この場にあるピアノはブリュートナー社のピアノ。
ご存知の方はいらっしゃるとおもいますが、このメーカーのピアノは、高音域に共鳴弦が
さらにもう一本、普通の弦の上に張られ、温かい響きのする素敵なピアノなのですが、
まあ、この晩のピアノはかなりの年代物。
が、素晴らしい低音の響きは、独特な雰囲気。個人的に古いピアノに接するのは
大好きなものの、ちょっと規模の大きい室内楽となると、冗談抜きに厳しいものがあります。
リハーサルどおりのテンポでは無理、なんてことが往々にしてあるわけなんです。
「ベートーヴェン/ピアノ5重奏 Op.16」、そして「プーランク/ピアノ6重奏」と、
正直このピアノの限界だったかもしれません。
演奏会終了後、ソサエティーの運営者の方々とクリスマスには欠かせないミンスパイと
ワインを頂き一時を過ごしました。
このミンスパイ、ミンスとは、minced meat(ひき肉)から来ていて、
16世紀エリザベト朝時代には、本当にひき肉と干し葡萄、スパイスを脂肪で
固めたものだったらしいです。
いつの頃からか、ひき肉は消え(消えてくれて良かったと思うのは私だけでないはず)、
今はミンスパイというと、オレンジピール、りんご、干し葡萄、シナモン、
ナツメグなどが入ったお菓子なんですね。
何でもこれをクリスマスから十二夜までに12個食べると良いことがあるそう。
Quintillionのメンバーの一人、フルート奏者の向井知香さんは
ただ一人BBCウェールズで日本人として頑張っている王立音楽院時代からの親友。
演奏会終了後、ウェールズの首都、カーディフに五重奏のメンバーは帰り、私はストラットフォードに
一泊して翌日市内見学。
翌朝は、嵐のような雨が嘘のように晴れ、親切にも市内見学同行を申し出てくださった
コーヘン夫妻のお陰で充実した一日となりました。
まずは、シェークスピアが洗礼を受け、そして奥様、アンとともに埋葬されている
聖トリニティー教会。
| 「シェークスピアの生家」 |
シェークスピアの墓、彼が洗礼を受けたと思われる15世紀製の洗礼盤などを見学したあと、
ふとみつけたもの。
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| シェークスピアの眠る墓 (クリックで実物大) |
ミゼリコードです。ミゼリコードとは、聖歌隊の椅子の裏、または年老いた礼拝者の方がちょっと腰をかけるために作られた小さな椅子の裏などに彫られた彫刻のことをいうのですが、胴体から獣のような足が出ている得体の知れない像とか不気味なものも結構あるんです。
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| ミゼリコード 旦那様にピシャピシャ! (クリックで実物大) |
この教会で見たもの、あまりにも可笑しくて、思わず写真。
わかりますか?
奥さんのお尻をペンペン引っぱたいている旦那さん?の彫刻。
教会なんてつまらない、なんてとんでもないでしょう?
さて、教会見学後、川沿いに歩いて工事中のシェークスピア劇場を見ながらシェークスピアの家へ。
博物館が隣接されています。
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| 町並みから (クリックで実物大) |
ストラットフォード合唱団に属している奥様の合唱団のご友人がチケット係ということもあり3人ともチケットもなしにプライベートガイドまでついてVIP気分。
当時のシェークスピア家のような中産階級の家の壁にかかっていたと思われる薄い布(タペストリーはあまりにも高級すぎたんですね)、これがシェークスピア家にも掛けられており、その色鮮やかな色合いに驚きました。
部屋を明るくするためだったのかな?
夫婦の寝室にあるベッドは縄で作られた調節可能なマットレス。
ベッドの下から別段で出せるマットレスに、子供たちを5歳になって一人でキャンドルを
安全に使用できるまで寝かせていたとか、雑学をたっぷり仕入れてきました。
シェークスピアの家を後にランチにしようということで歩いていると
これまた合唱団のメンバーにばったり。
なんと、今度は、大女優、ジュディ・デンチのお兄さん、やはり役者のジェフリー・デンチ。
夫妻にご紹介をして頂き、ニコニコしながら握手をしてくれた白い髭のおじいちゃん、
そのピンと伸びた背筋に舞台に立つ人なのだなあと感心させられました。
デイムという称号まで授かった女優、ジュディ・デンチのお兄さん、
なんて紹介されるのも辛いものだろうなあとおもうのですが、
彼もやはり有名な役者だそうです。
最後にクリスマスのミンスパイの話のついでに英国の冬の朝に欠かせないもの、
ポーリッジをご紹介。
オートミール粥、つまりお米の代わりにオート麦で作るお粥なのですが、
これ、イギリス人は普通蜂蜜やお砂糖で甘く食べ、スコットランド人は塩を振るらしいです。
いつもはシリアルに冷たい牛乳の私も最近は、寒いこともありポーリッジを食べることもあります。
私はそこにレーズンとりんごを入れたりします。
| 「ボーエンの逸話」 |
さて、ここで一つ面白いお話を。
イギリス人作曲家、そして素晴らしいピアニストだったヨーク・ボーエン(1884-1961)が
夏に開催されるプロム音楽祭での演奏会での出来事。
二つのピアノ協奏曲を前半と後半に弾くことになっていた彼、
前半が終わると突然タクシーを呼び家に戻ってしまいました。
何事か?
なんのことはない、家のストーブにポーリッジをのせたままであることをすっかり忘れていて、
ポーリッジが台無しになってしまう!ということで慌しく帰宅。
何食わぬ顔をして「ロイヤル アルバート ホール」に戻り無事後半のプログラムを終えたとか。
この話、あまりにも笑えてしまって、一体どの協奏曲を弾いていたのかすっかり忘れてしまいました。
調べておきますね。
演奏中にハッと思い出したんでしょうか。
それにしてもポーリッジに対しての異常な情熱といっても過言ではないかも。
ちなみに、ヨーク・ボーエンの作品を中心に4月5日に公開講座を行います。
ボーエンの作品だけでなく他の英国人作曲家の作品のほか、
受講者の方々が持ってきてくださった自由曲を中心に進めていく予定です。
それにあたり、この場を通じて少しずつ、ボーエンにまつわるお話をしていこうと思います。
また、「松永教授のとっておき宝箱」において、教授もボーエンの連弾作品を
ご紹介していらっしゃいますので、ご参考になってください。(和香)
【2007.12.18入稿】