昨年はモーツァルト生誕200年のメモリアル・イヤーに当たり,
モーツァルトの作品の演奏会やCDの新発売も
とても活発であった。
とかくマイナーな存在になりがちなデュオ作品も,
あちこちで耳にする機会があり,
たとえ演奏の質はさまざまではあっても,改めて聴くといずれの作品も,
心から「なんて良い曲なんだ!」と思わずにはいられない。
そして演奏会やCDに比べると,地味な存在だが,
デュオの楽譜が充実したことも決して見逃すことはできない。
まず連弾作品ではウィーン原典版による連弾曲集
“Werke für Klavier zu 4 Händen”*1)が出版された
(コピーライト表示は2005年)。
「フーガ ト短調 K.401」以外の全9曲の連弾作品を含み,
全曲スコア形式を採り,解説まで入れると300ページまであと一歩という,
まさに「重厚な」力作である。
「楽譜が売れない」この時代に新刊を,
それも新作の楽譜ではなく,スタンダードなレパートリーをあえて刊行することは,
営利面だけで考えたら,とてもできない冒険であろう。
それだけに,このウィーン原典版*1)には,
新しい情報を盛り込んだという出版社の自負と心意気が窺える。
なので粗雑に扱って万一,足の上に落としたりすると,
骨折という罰が当たりかねない。
それはさておき,スコア形式の楽譜だと,
P・S間の掛け合いや模倣などの両者の関係が,
それこそ「一目瞭然」である。
しかしレイアウトの関係でページ数は増え,
例えばプライトコップ&ヘルテルの旧全集版のリプリント
*2)である
ドーヴァー版*2)で
14ぺ一ジに収まる
「ソナタ ニ長調 K.381」が,
この楽譜では23ページと,ほぼ65%増となる。
もしステージでこの楽譜を使った場合,
譜めくりの回数もそれだけ増えることになり,
視覚的には煩わしいことであろう。
もっとも,暗譜で演奏すれば関係ないのだが…。
(この項,続く)
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